
『日本のサラリーマンを描いた漫画の代表といえば?』という質問に対し「島耕作」と答える人も多いのではないだろうか。
確かに島耕作は読み物としても、日本のサラリーマン社会を学ぶ材料としても非常に素晴らしいものだと思う。
しかし、1つ注意しておかなくてはならないことがある。現実世界と漫画の世界をハッキリ分けるということだ。
例えば、島耕作を読み『ようし、俺も出世してやがては社長まで上り詰めるぞ!』と決めたとする。この場合【島耕作の生き方は出世の教科書になり得るか?】ということだ。
答えは、即座にノーである。
ということで、今回は漫画「島耕作」を題材に出世することについての考察をしていく。
そもそも「島耕作」の作者が社長までの出世方法を知らない
『課長島耕作』(かちょうしまこうさく)は、弘兼憲史による日本の漫画。『モーニング』(講談社)にて、1983年から1992年まで掲載され、2018年3月1日から2018年8月22日までコミックDAYSにて毎日再掲。
シリーズ作品に『部長――』『取締役――』『常務――』『専務――』『社長――』『会長――』『ヤング――』『係長――』『学生――』(『ヤング』『係長』『学生』の掲載誌は『イブニング』)があり、これらも全て本項で取り上げる。島耕作シリーズのコミックス累計発行部数は約4,000万部に達する。
1982年当初のタイトルは『カラーに口紅』であったが、創刊時の編集長の栗原良幸によって『係長島耕作』に変更させられ、それが今日まで続く翌年からの『課長島耕作』シリーズの長期連載につながった。
引用元:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%B2%E9
%95%B7%E5%B3%B6%E8%80%95%E4%BD%9C
まず前提として、島耕作が生きる世界はフィクションである。この世界を描いたのは漫画家であり、漫画家は漫画を描くのが仕事である。
作者の弘兼憲史はサラリーマンの経験はあるかもしれない。しかし社長まで成り上がっていく出世の課程や方法は知らない。
つまり、その道でなったことがない人には、そこまでの道筋は鮮明に描けないということだ。例えて考えてみよう。
義務教育の世界で、学校教師から読み書きを教わることができても、お金持ちになる方法を教えてもらえないのと同じ原理だ。学校教師は、読み書きは高いレベルでできる。しかし、お金持ちではない。
※一般的な見解
島耕作の出世というのは、あくまで作者が想像で描いたものであることを理解しておく必要があるのではないだろうか。
「島耕作」は社長に出世できる人のレベルで仕事をしていない


島耕作は、正直なところいたってフツーの会社員である。ひいきめに見れば仕事はできるほうだと思うが、突き抜けてスゴイできるというわけでもない。
平日はそこそこ残業をし、夜は会社絡みの接待を器用にやり抜く。土日祝は会社規定にならい基本はきっちり休む(たまに休出もしているようだが)。
自分の人生に対する明確な目標、野望があるわけではない。どちらかというと、行き当たりばったりで短期的な思考で物事を判断する傾向にある。
これは極めて、平均的で常識的な日本のサラリーマンの生き方ではないだろうか。つまり『フツーレベルのポテンシャルの人がフツーレベルの努力でどうやって会社のトップになれるのか??』という疑問がわくのだ。
私たちが生きる現実の世界というのはそう甘くはないものである。そもそもの話、人間が持っている能力自体、元々の差はほとんどないと言われているのだ。
そういった前提で改めて考えてみる。『周りの人たちと似たような努力量で本当に非常識といえる結果を作れるのか?』と。
冷静に考えれば、このことが幻想であることに気づくはずだ。
出世の階段を上り詰めたとしてもなれるのはサラリーマン社長


島耕作が最終的に行き着く役職は社長(会長)である。ただし、その名の通りサラリーマン社長。
このサラリーマン社長という肩書き、実際のところ、社内で一番権限がある人にしかすぎないのだ。
会社を所有し最高の権限を持っているのは、会社の資金を出資する株主である。
つまり、幾多もの激しい出世競争を勝ち抜き、会社内でトップになれたとしても、その上には株主という生涯超えられない存在がいるのだ。
当然のことながら、社長は株主の経営方針に沿って仕事をしなくてはならない。これでは本物のトップとは言えないのではないだろうか。
このことが【サラリーマン(株主から雇われる)社長】と呼ばれる所以である。
また、以下のリスクも考えておく必要がある。例えば、自社が経営不振となったとき、株式総会の決議で経営責任を問われ解任されることもあり得る。
これを一つの航海に例えてみるとする。
◯株主
⇒船を作る為の資金を出す出資者
(目的地を明確にし、船長に航海を任せる)
◯社長
⇒船長
(目的地までの舵取りと到着する迄の結果の責任を取る)
◯従業員
⇒船員
(上司の指示の元、進路に従って船を進める)
もし『社長になりたいが、頑張った先がサラリーマン社長なんて嫌だ!』と思ったら、自分で起業してオーナー社長になるしか道はない。
私が個人的に思うのは、とてつもない努力をし30年近くもかけて出世競争を勝ち抜いた先に得られるのがサラリーマン社長。というのは、ちょっとあり得ない話だ。
失う代償に対して、得られるメリットのほうがあまりに小さすぎると感じるからだ。
まとめ


私個人としては、島耕作という人間が心の底から好きである。
○明るくて気さく、親しみやすい人柄
◯正義感が強く誠実
◯人の気持ちを汲み取れる
◯義理堅く忠義心が高い
プライベートで、彼のような人間と深く長い付き合いが出来たらいいなとも思う。また、漫画のストーリーも社会情勢を学べたりと読み物としても非常に興味深く面白い。
しかし、島耕作が生きる世界はフィクションである。サラリーマン社会や日本経済を学ぶには素晴らしい材料かもしれない。私たちが生きるのはあくまで現実である。
だからこそ島耕作の出世や生き方と、自分の人生を分けて考える必要があると思うのだ。彼と同じ努力や生き方をすることで、同じような結果を得られるとは限らない。
成功している人ほど、極めて現実主義者として生きているのである。
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