【体験レポート】家賃滞納で裁判沙汰になる家の強制執行現場とは?

私はかつて借金まみれで返済に終われていた頃、その日暮らしの日銭を稼ぐ為にありとあらゆる仕事をしました。

中には「世の中にこんな仕事ってあるの?と思われるようなある意味ネタ作り的なものもやりました。その内の1つが、家賃滞納で裁判沙汰になった家の強制執行補助の仕事です。

ということで今回は「家賃を滞納すると最後はどうなってしまうのか?」というテーマで私の現場体験レポートをお届けします!

【体験レポート】家賃滞納で裁判沙汰になる家の強制執行現場と

【解説】家賃を滞納するとどうなる?

実際に家賃を滞納してしまった場合、どのような流れで話が進むのでしょうか。

最初は催告から

家賃の滞納があった場合、最初は通常大家さんから入居者に対して家賃の催告が行われます。今手元にお金がなく、後日入金できるのであればその日付を伝えると良いでしょう。賃貸借契約の段階で連帯保証人をつけている場合には、この段階で連帯保証人に連絡が行くこともあります。

内容証明郵便が送られてくる

催告しても家賃の支払いがない場合、またそれが2ヶ月続くような場合には滞納された家賃の額が掲載された内容証明郵便が送られてくるでしょう。その内容証明郵便では、記載された日付までに入金がない場合には法的手続きをとる旨が掲載されています。なお、この内容証明郵便は連帯保証人にも送られることがあります。

裁判外での交渉

内容証明郵便郵送後も家賃の滞納が継続した場合には裁判外での交渉が行われることになります。家賃を数ヶ月支払っていない場合にはその額も大きくなっていることが考えられるため、分割払いにするなどその支払い方法を交渉する事になります。ここで話しがまとまれば、支払い方法を示した合意書を作成し、その合意書に基づいて支払いを行っていく事になります。

話がまとまらない場合はADRなどの利用も

当事者間だけで話がまとまらない時には裁判外紛争解決手続と呼ばれるADR制度が利用されることもあります。ADRでは裁判所の裁判をすることなく、弁護士などの専門家が間に入り調停や仲裁を行ってくれる手続きです。裁判より手続きが簡単で、解決までの時間が短く、費用も安く済むという点でメリットがあります。

裁判手続き

ここまで来て家賃の支払いがなされず、話がまとまらない場合には裁判所から支払督促がなされることがあります。支払督促は、裁判所が大家さんに変わって請求書を送付してくる手続きの事で、この請求書は判決と同じ効力を持つ事になります。

賃料請求訴訟

大家さん側から裁判所に訴状が提出された場合、裁判所でお互いの主張を行い、またその主張を裏付ける資料を提出して立証していく事になります。賃貸借契約では大家さん側に支払いがないことの立証をする必要がなく、借主側が支払をしたことを立証する必要があります。お互いの主張と立証が済むと、裁判所の判決が出される事になります。

なお、判決に対して不服であれば不服申立てをすることができます。不服申立てでは簡易裁判所〜地方裁判所〜高等裁判所〜最高裁判所と、進んで行く事になります。不服申立がなかった場合には判決は確定し、その判決に基づいて強制執行がなされます。

強制執行と差し押さえ

判決が確定した後にも家賃を支払わなければ確定判決に基づいて強制執行がなされます。強制執行では財産が調査され、預金口座や給料などを差し押さえられる事になります。

不動産明け渡しの強制執行

裁判で不動産明け渡しの確定判決が出たら当事者間で明け渡しの時期や不動産内の動産の撤去の時期、鍵の引き渡しなどについて話し合いが行われます。この明け渡しが行われない場合には、手続きすることで裁判所の執行官から明け渡しの勧告がなされ(1ヶ月)、それでも退去しない場合には執行官が訪れ強制的に明け渡しがされることになります。ここで撤去された遺留品は執行官の倉庫に預けられることになります。

引用元:https://mansion-market.com/sapuri/delinquency/

強制執行現場に集まる人たち

ここから先は、私がかつて体験した強制執行の仕事を紹介します。

まず、強制執行日の前日までに私たちスタッフ宛てに対象者の住所を知らせる確認連絡があります。

現場の仕事は基本、現地集合、現地解散です。時間は毎回決まっているわけではなく、午前中だったり、午後イチ過ぎだったりマチマチでしたね。

ただ、暗くなると作業に支障が出るので夕方以降に始まる現場はないです。

以下、当日の現場のキャスティングです。
複雑な事情ゆえ色んな人たちが集まります・・・。

 

管理人(大家さん)・・・居住者の家賃滞納で最も困っている人
→当日は居住者の部屋の鍵(スペアキー)を強制執行者に渡すこともあり

裁判官・・・法的な手続きに沿って、強制執行のゴーサインを出す人
→強制執行の当日は対象者の窓口になる役目

回収を委託された業者・・・強制執行の実務対応をする
→主に、部屋内の物を全てトラックに詰め込み、空にするという業務を請け負う。現場のスタッフへ指示、管理をする。

派遣スタッフ・・・委託業者からの募集により日雇いで集められる、規模によりきりだが大概は3~6名くらい。
→回収業者担当の手となり足となる。物を運びだしたり、部屋の掃除をしたり何でもやらされる。
※私はここのポジションでした

強制執行日、当日の流れ

まずは、事前に予告しておいた強制執行日時の一時間くらい前に回収業者とスタッフが集合し軽く打ち合わせをする。

回収業者が事前に下見をしているケースがほとんど。あらかじめ居住者の家にどんな家具や物が置かれているか、回収する物量はどれくらいなのかを想定しトラックやスタッフ数の割り当てがされている。

執行予定時刻の直前に、管理人や裁判官がやってきてスタンバイという流れがほとんどでしたね。

一同集合したら、裁判官を筆頭に居住者の家の前でズラっと張り込みます。もし隣人や、通りすがりの人がこのシーンを見てしまった場合かなり異様な光景だと思います。

もしスキャンダルネタや芸能ニュースなどにめざとい人に気づかれてしまったら、格好の話題にされる気がします。

そんなこんなであらかじめ告知しておいた定刻になったら、裁判官が居住者のインターホンを鳴らします。

こんなレアケースな事態もあり

こんな事態ですから、大抵の場合居住者は行方をくらまし空き家になっていることがほとんど。私は過去に30件くらいこの仕事をやりましたが、対象者が住んでいたのは内2件。

1件は対象者が裁判官に泣きつき、結果「払います」ということになり示談。もちろん強制執行は取り止め。この場合、私たちスタッフの仕事はなくなりますが、規定通りの給料は受け取れます。ある意味美味しい仕事だったのかもしれません(笑)
あとの1件は居住者が居座っているパターン。なんとこの期に及んで、住み続けているという女性がいたんです。20代前半くらいの若い女性(日本人とフィリピン人のハーフらしかった)で、彼女は私たちが回収業務にあたっている間、悪びれる素振りもなく傍観していましたね。担当者の話では近いエリアに引っ越しすることが決まっているということでした。世の中には私の常識より遥かに高い次元で生きている人がいるんだな、という気付きがありました(笑)

幸か不幸か家賃の滞納って民事の扱いになるので対象者を逮捕する措置はとれないんですよ。おそらく、先述の女性は確信犯的に家賃を踏み倒しては引っ越しを繰り返していたのではないでしょうか。控えめにいって人間国宝と呼んでおきましょう。

いざ、強制執行!答えは部屋の状態にある

さて、話は戻ります。インターホンを押しても、大半は応答なし。そして裁判官はドア越しにこう続けます。

◯◯さん。ご不在のようですので通達通りこれから強制執行手続きに入らせて頂きます」的な言い回し。

あとはもう想像の通り。回収業者が住居の鍵を受け取り、家の中へ潜入。部屋の中は大体以下の2パターンです。

 

・もぬけのから
→強制執行を見越し、家財などを事前に売り払い換金していたものと見られる
→もしくはキッチリ引っ越しで持ち出し済み

・足の踏み場もないくらいのゴミ屋敷
→程度の差はあれ、住んでから一回も掃除をしていなかったことは容易に想像できるパターン
→犬などのペットを飼っていた場合などは悲惨で、部屋に入った瞬間悪臭でめまいがするケースもありました

 

上記、どういった状態であれ現状復帰させるのが私たち業者の仕事でした。

つまり、アタリハズレがこれほど明確に分かれる仕事もないわけです。あるときは、お皿1つ置いてない現場でものの10分とかからず撤収、解散。あるときはあふれかえるゴミと格闘しながら、残業対応。

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今となるともう二度とできないであろう強制執行現場の仕事、というお話でした。

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